網の中の女装

札幌から帯広までのJR北海道の特急で
車窓からの景色を見ながら考えたことがあります。
 
流れていく剥き出しの自然、雑木林、原野を見ながら
自然との対比で人間社会とはということを考えてみました。
 
ネット社会の到来という言葉をよく聞きますが、
ちょっと待てよ、と思いました。
ずっと前から、ネット(網)は形成されていたことを忘れていないかと。
 
社会生活を行っていくためのさまざまなライフライン
水道網、電力網、ガス網、通信網、道路網、鉄道網、放送網などのように
すでに網の目(ネット)のように人間社会に張り巡らされていて、
国から地方自治体といった統治網も張り巡らされています。
会社の組織も大きな会社は全国に支店網、ネットワークが形成されています。
そして、人間が人間であるための最低限のルールの法律も
警察などを通じて網の目のように社会を包んでいます。
 
つまり何が言いたいのかというと
近代国家とは広域な社会というものを形成するために
網(ネット)を張り巡らせることに注力してきた社会であった
ということなのです。
 
では新しいネット社会の到来とは何かということになりますが、
それは相互性(インタラクティブ)にあると考えます。
インタラクティブというと通信網ということが真っ先にあがりますが
それはもちろんのこととして、全国各地を旅してみて、
インタラクティブで社会を大きく変えているなと実感するのは道路網です。
 
現在、地方の都市でシャッター商店街というのが問題になっています。
以前は賑わっていた商店街に人が来なくなり、
寂れて閉店する店が相次いでいると言われています。
しかし、人口は確かに都市へと向かっていますが、転出の数を見ると、
高齢化は進んでいますが、そんなに急激に人口は減っていないのです。
何が言いたいのかというと買い物をする場所が変わった結果だということです。
 
道路網の整備により、旧市街地ではなく、国道沿い、バイパス沿いの
大きな道路近くにある巨大なショッピングモールや大型店に人が集まっているのです。
また、進展した道路網を足がかりに物流網が発達し、
信販売・ネット販売が増加したのです。
 
私はずっと都会に住んでいて、あまり都会を出たことがなかったので
道路網ということに関してあまりピンと来ていませんでした。
むしろ道路財源と聞くと、無駄な公共事業くらいに思っていました。
道路網の持つ相互性はかくも社会を変えているのです。
 
道路網が整備され、地方の若い人は確実に車で移動できるお店に集まっています。
そして、その社会構造の変化がノンアルコール飲料のブームにつながっている
と思いました。私の以前の発想ではお酒は酔うためのもので
アルコールの入っていないお酒は意味がわかりませんでした。
でも酔ってしまっては運転をしなければならない人が困りますから
ノンアルコール飲料がこんなに売れているのだと合点がいきました。
道路以外の交通網も発達した東京で暮らしていると気づかないことばかりです。
 
私たちは網の中で生きています。
その網は私たちを取り込み、守るために何重にも包囲しています。
うざかろうがうざくなかろうが、それなしでは生き難い体質になっています。
昔「Into The Wild」という映画を見て、もやもやっと思ったことが
やっとどういうことなのかわかりました。
 
そして人間が社会を作るのに網(ネット)を形成するのが
自然なことなのだということも納得できました。
よく考えると自分の身体の中でさえも、
網のような血管網に神経網などのネットワークが取り囲んでいるのです。
あなたを見つめるための視覚情報も網膜という網を通じて感じているのです。
つまり生物を天が作ったとすると
天網の塊である人が人網を作り続けているということは至極当然のことなのです。
 
女装も網の一部であり、網の中で生きている。
なんとなく北の大地を見ながら
そんなことがどわーっと頭の中を駆け巡ったのでした。
 
今回はおっさんモードでしたね。すみません。