美しい嘘

またまた昨日の続きで
  
女装というお仕事は
女性を装い、女性のフリをして、嘘をつくことだ
と書きましたが、
昨日、あれからまた考えて、
もしかするとエンターテインメントのお仕事全般が
壮大な嘘をつくための仕事なのだなと思いました。
  
私たちは一生懸命嘘をつく仕事をしています。
  
私の場合はショウもメインは口パクですし、
生歌で歌う時も、自分の体験したことや考えたことでもなく
歌世界の再現を試みるだけです。
世に溢れている歌やお芝居も実際には起こってないけど
嘘で世界観を再現するという仕事なのではないかと思ったのです。
  
芸能の仕事は虚業だよ。
  
なんてことを世間ではよく言います。
実際、東日本大震災の時に真っ先に削られたのはこういうお仕事でした。
実業の逆という意味ですね。
  
でも、だからこそ
私たちは嘘に真剣に取り組まなければならないのです。
嘘を本当と同じくらい大事に扱わなければならないのです。
  
なぜなら、嘘の世界は人間の願い、欲望、夢、醜悪、滑稽、皮肉、
あらゆるものが投影された世界です。
それをデフォルメしたり、編集したりして
嘘だけど、そこに一つの真実を紡ぎだすということが重要になってくるのです。
  
そしてその紡ぎだされた真実は
実業で働く人々の糧となったり、希望となったり、笑いでストレスの昇華を助けたりして
社会を回していくのです。
  
震災が起こったとき、私はただただ一人ぼっちで震えていました。
自分は何もできない。何の力もない。
虚しい仕事だ。何やってるんだろう。
  
でも、社会は立ち直るのに虚業を必要としていました。
私たちは役に立っていなそうで、役に立っているのかも
なんてことを思い直すことができたのもこの時でした。
  
といいつつも
いつも夢、希望、なんてことを女装がやると気持ち悪いので
そうでないいろいろな感情や世界を皆さんに見てもらって
何かの気持ちを昇華してもらえればいいな
なんてことを思いながら働いています。
  
だから、嘘を大事にする私は
最近のぶっちゃけとか暴け、暴け、という風潮が気に食わないのです。
そこに真実はあるのか、そこに人々に活力を与える何かがあるのか?
  
だったら、誰かが責任を持って紡ぎだした真実を流したほうが
よっぽど価値があります。
事実か事実でないかというのは確かに大事ですが
それよりもそのことに価値があるか、価値がないか
という方が私にとっては大事なことです。
  
価値ある女装
なんかロレアルパリのキャッチコピーみたいですね。
あなたにはその価値があるから。
  
化粧ももしかしたら嘘の一つかもしれません。
すっぴんの事実より
化粧した価値あるものの方が良いということでしょうか。
  
だから化粧品会社と女装は親和性が高いのですね。
ふむふむ。
  
もしかしたら女性の方が芸能という嘘の世界に寛容というのは
毎日化粧をする時に少しずつ嘘をついているからかもしれませんね。
 
かなうなら
美しい嘘を契りあいたいですね。
なんてね。ほほほ。